【岐阜 FP最新ニュース】【がん保険の選び方】陽子線・重粒子線治療などの「先進医療保障」は検討すべきか否か 保険適用範囲が拡大している点にも注目
【岐阜 FP最新ニュース】【がん保険の選び方】陽子線・重粒子線治療などの「先進医療保障」は検討すべきか否か 保険適用範囲が拡大している点にも注目
保険各社の主力商品である「がん保険」。「国民の2人に1人ががんになる」というCMに不安を覚える人もいるだろうが、がんに罹患することなく一生を終える人もいる。加入の是非は個人個人のケースによって異なるため、悩ましいところだ。
がん保険加入の売り文句として保険各社に使われるのが、高額になると予想される「先進医療への備え」だ。実際に加入した50代男性が語る。
「5年ほど前、がんの先進医療にかかる費用が最大2000万円までカバーされるがん保険に加入しました。それまで死亡や入院時の保障は最低限で十分と考えていたので、比較的保険料が安い医療特約付きの生命保険に加入していたのですが、保険会社勤務の知人から『がんの先進医療を受けると数百万円の自己負担が生じる』と聞き、慌ててがん保険を追加しました。月々の保険料は終身払いで4000円程度です」
近年のがん治療では「陽子線治療」や「重粒子線治療」などの先進医療が選択肢になる場合がある。いずれも放射線治療の一種だが、がん細胞にピンポイントで放射線を集中できる特徴があり、身体への負担も少ないとされる。
対象となるのは外科的手術による根治が困難な「肺がん」「食道がん」「肝臓がん」「腎臓がん」「原発不明がん」など。診察・検査費用などは保険が適用されるが、それぞれ300万円前後かかる「先進医療の技術料」は全額自己負担だ。
そうした高額治療費に備えるため、先進医療にかかる費用をカバーするがん保険が次々に登場。がん保険の主契約に「先進医療特約」を月々数百円程度で付加できるタイプもある。
保険適用となる範囲が近年拡大している
だが医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう言う。
「陽子線治療や重粒子線治療の対象である主ながんは、保険適用の従来の放射線で治療できるケースがほとんどです。新幹線でたとえれば、従来の放射線が『こだまの自由席』なら、照射回数が少なく身体への負担も少ない陽子線・重粒子線は『のぞみのグリーン席』。お金に余裕がないのに無理して選択する必要はないでしょう」
実際にがん患者が陽子線・重粒子線治療を受けるケースは少ない。大手生保会社での勤務経験があり、保険に関する著書も多いFPの横川由理氏が説明する。
「2023年12月の厚労省会議資料によると、先進医療として陽子線治療と重粒子線治療が実施された件数はそれぞれ824件と462件でした。同年のがんの全罹患者数のわずか0.13%にとどまる計算です」
陽子線や重粒子線治療が保険適用となる範囲が近年拡大していることにも目を向けたい。
「2022年4月から、手術で切除不能な大型の肝細胞がんなどが保険適用となりました。自己負担は1~3割で済み、さらに高額療養費制度が使えるので、月の医療費は8万円程度(収入により異なる)まで軽減できます。がん治療は基本的に保険適用の標準治療で十分なケースが多いので、まずはそちらを優先的に検討すべきでしょう」(上医師)
高額治療費という言葉に惑わされることなく、保険の必要性を見極めることが重要だ。
※週刊ポスト2024年4月26日号