【岐阜 FP最新ニュース】失業や育休で恩恵にあずかる、地味だが有用な「雇用保険」
【岐阜 FP最新ニュース】失業や育休で恩恵にあずかる、地味だが有用な「雇用保険」
公的保険の中で議論されることの少ない、脇役のような制度「雇用保険」はどのような仕組みなのでしょうか。今回は雇用保険の全体像をお伝えします。まずは雇用保険という制度の認識からスタートしましょう。
雇用保険とは、社会人として働き始めるタイミングで加入することが多く、給与明細をよく見てみると「雇用保険料」の項目があることに気づきます。会社と従業員の双方が保険料を負担しています。
労働者を雇用する事業では、雇用保険は強制加入の保険です。失業して収入を失った場合や、雇用の継続が困難な場合、労働者自らが職業訓練を受けた場合、育児のため休業している場合などに給付を実施します。ほかにも、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、労働者の能力開発なども行っています。
これまで学んできた健康保険とは、だいぶ色合いの違う保険制度であることを感じていただければ、今回の記事では十分だと思います。
■週20時間以上働く人は、ほぼ雇用保険の対象
雇用保険は、正社員やパート・アルバイトなど働き方にかかわらず、
(1)週の所定労働時間が20時間以上
(2)31日以上の雇用見込みがある場合
に被保険者となります。
パート・アルバイトは多くの場合、とくに雇用期間の定めがないと思いますので、週の労働時間が20時間を超えるかどうかが、実質的な加入の判定材料と言えます。
法人の代表者は対象外となり、法人役員の場合は、労働者としての性質の色合いの濃い働き方の場合は、被保険者となることもあります。使用者側は被保険者ではなく、雇用される側が加入する保険と捉えておくと判別しやすいでしょう。
なお、公務員は雇用保険の適用対象外となっており、保険料の負担もありません。自分が雇用保険の対象かどうかを見極めるには、給与明細で「雇用保険料」の有無を確認するとよいでしょう。
会社勤めの若手社会人は雇用保険の加入が必須となりますが、自ら起業したり、新設企業に役員として参画したりする場合は、雇用保険の対象ではなくなる可能性があります。
■失業、休業、教育の際に給付を受けられる
「雇用保険料=額面給与×雇用保険料率」として計算されます。雇用保険料率は業種によって異なり、一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業となっています。
労働者の保険料は額面×0.6~0.7%、事業主負担は額面×0.95~1.15%となっています。労使でおおむね1.5~2%程度の保険料になっていると覚えておくといいでしょう。
雇用保険は、大きく失業、休業、教育の3つの制度があります。知られていない制度や、子育て時などにいつの間にか利用している制度もあります。地味ながら有用な、縁の下の力持ちのような制度だと考えるといいでしょう。
基本手当:被保険者が定年、倒産、期間満了等により離職した場合に、生活の心配をせずに済むよう給付金を支払う制度です。再就職手当:基本手当を受給し始めた後、早期に就業した場合に給付金を支払い、早期再就職を促進する制度です。育児休業給付:1歳未満の子を養育するための休業期間に給付金を支払う制度です。出生時育児休業給付:パパの育休を奨励するための制度です。介護休業給付:親、配偶者、子、祖父母、兄弟姉妹、孫などを介護するための休業期間に給付金を支払う制度です。一般教育訓練給付金:厚生労働大臣が指定する一般教育訓練講座を受講、修了した人に対して給付金を支払う制度です。専門実践教育訓練給付金:厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練講座を受講、修了した人に対して給付金を支払う制度です。基本手当は「失業保険」と呼ばれることも多く、こちらを聞いたことがあるかもしれません。出生時育児休業給付は、最近できた制度なので、知らない人も多いと思います。
教育訓練給付は、政府が力を入れている分野でもありますので、利用できる講座がないか調べてみるのもいいでしょう。
■利用する可能性のある制度は詳細条件の確認を
雇用保険は「働く」ことを中心として、働けなくなった場合、新しい職場で就労した場合、子育てや介護のために仕事を休んだ場合、スキルアップ等の職業訓練を受けた場合などに、金銭的な公的支援を受けられる制度です。
個々の制度ごとに細かな条件が定められており、都度改正されます。どのような制度になっているか概要を把握しておき、実際に使えるかどうかは、利用の可能性がある場合に確認するといいでしょう。
一定年数の勤務経験があれば、どの制度も条件に合致しやすくなっています。新社会人の場合は、勤務月数などの条件が合わない場合があるので、注意が必要です。
高橋 成壽(たかはし・なるひさ)/1978年神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、2001年にFP資格を取得。投資や保険などのキャリアを経て、2007年にFPとして独立。自身の投資経験と世界の金融ネットワークを活用し、シングルマザーから上場企業の経営者まで、1人ひとりに合わせたお金のアドバイスを提供している。有料のFP相談「 寿FPコンサルティング 」、無料のマネー相談専門家マッチング「 ライフデザインセンター 」を運営。2020年より東海大学非常勤講師として学生向け金銭教育に従事。著書に『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』(廣済堂出版)がある。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
高橋 成壽